鎧男と傷女-1-

あるところに、重い鎧で全身を隠し、鉄の鞄を背負いながら歩く男がいました。
その男は、毎日足元だけを見ながら歩いてました。
鞄と鎧が重過ぎて、その重みに倒れないよう足元を用心深く歩いてました。
ある日、その足元に赤い血の跡を見つけました。
その跡を辿り、後ろを振り返ると、全身傷だらけの女が走っていました。
誰かを捜してるような
何かに追われているように
キョロキョロと周りを見渡しながら走っていました。
全身の傷はいく筋もの赤い線のようでした。
まるで身体中に赤い糸を巻きつけてるようにも見えました。

男が声をかけました。
「血がでてるぞ、手当しなくていいのか?薬はあるのか?」
女がこたえました。
「気付いてくれて、ありがとう。薬はもってないの。気付いてくれる人を捜してたの。」

ふと男は周りを見渡しました。
あちらこちらに、色んな鎧や荷物を持って
下を向いて歩いている人がいたからです。

男はいいました。
「鞄の中に薬があったはずだから、つけるといいよ。」

女がいいました。
「ありがとうございます。あなたが付けてくれますか?」

男はいいました。
「いいよ。」
女がこたえました。
「ありがとう。」

鎧男と傷女-2-